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入居者トラブル
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更新日 : 14/09/10

クレーム対応の秘訣⑧盗難被害が発生すると・・・

弁護士 石川貞行

「盗難」で家主はどこまで責任を問われるのか

盗難被害に遭うと、賃借人は賃貸人(家主および管理会社)にクレームをつけることがあります。
その主な内容は、①重要事項説明義務違反(以下、重説違反といいます)、②管理義務違反、③設備・構造上の欠陥、以上3点です。
①の重説違反に関するクレームは「盗難多発地域であることの説明を怠った」とか、「以前にも泥棒が入ったことの説明がなかった」などで、心情的には理解できます。
しかし、通常は法的責任や義務はないと思われます。
賃貸人には、賃借人が平穏・快適に生活できる建物を提供する義務があります。
しかし、窃盗のような犯罪行為まで予測して、賃貸人(家主および管理会社)が防犯設備を完備する義務はなく、入居時に賃借人が通常の設備で納得していれば、責任を負うとの特約を設けていない限り、それ以上の義務は問われません。

特約を設けて、自己防衛を

盗難事件は、いつ発生し、どのような被害を受けるかわからないものです。
賃貸人としては、万一、盗難に遭った場合のクレーム対策として、契約上の免責特約を設けておくことが大切です。
具体的には「地震等の災害、盗難その他、賃貸人が責任を負えない事由によって賃借人が被った損害については、賃貸人は責任を負わない」という趣旨の特約です。
また、盗難や事故に備えて、契約の時点で賃借人に家財保険に加入してもらいましょう。
掛金は多額ではなく、手続きは賃貸仲介業者が行いますので、賃借人の負担や手間はそれほど大きくはありません。
近年は家財保険が普及しており、クレームの発生は家財保険に未加入のケースがほとんどです。

「ピッキング被害」が発生すると、管理責任を問われる?

ピッキング被害のクレームも頻度が高く、次のような判例があります。
賃借人が管理会社に対して「管理義務違反による損害賠償請求」をした事例で、裁判所は以下のように判示し、管理義務を否定しています。
「賃借人の所有財産を盗難等から保護することを内容とする管理義務は、賃貸借契約から当然に生ずるものではなく、特約や信義則上の付随義務として認められる余地があるものと解する」、「(本件では)①契約書上、防犯について特段の合意が認められないこと、②盗難による被害は免責の対象とされていること、③出入口の扉はダブルキーであり一応の防犯効果が期待できることから、既存の鍵を維持管理する以上に義務はない」。
つまり、裁判所は賃貸人に落ち度はなく、責任の義務はないとしています。

たとえ法的な義務はなくても・・・・

しかし、賃貸人としては法的な義務はなくても被害に遭わないように、できるだけ対策を講じておくべきでしょう。
そして万一、泥棒に入られたら、手口を調べ、設備・構造上の問題があれば速かに改修すべきです。
ご参考までに最近の事例で、共用階段経由でベランダから泥棒に入られ、事件後すぐに、ベランダの柵を高くして防衛を図ったマンションがありました。

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プロフィール

いしかわ・さだゆき 1940年、愛知県生まれ。
1972年、中京法律事務所開設。
『家主・法律実務家・仲介業者のための借家トラブル解決マニュアル』
『借家トラブル解決文例集』『家賃滞納トラブル解決マニュアル』ほか多数。
趣味関連の著書に『名古屋周辺からの釣り船・船宿ガイド』がある。

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