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入居者トラブル
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更新日 : 15/02/23

原状回復ガイドラインの読み方と特約のつくり方② どうすれば特約が有効と認められるのか?

南青山法律事務所 弁護士 青木龍一

特約内容をきちんと借主に説明すること

空室率の上昇や家賃の下落などで、賃貸経営は厳しい時代になっています。
経年劣化による損耗などでも、一定程度は借主に補修費用を負担してもらいたい」というのが、多くのオーナー様の正直な気持ちだと思います。
では、どうすれば「本来、貸主負担とされている補修費用」を借主に負担してもらうことができるのでしょうか。
裁判所はなにも、借主に費用負担を求める特約のすべてを無効としているわけではありません。
ケースバイケースで、借主に費用を負担させることが有効と判断される場合もあります。

 ●「借主の合意が明らかなこと」が必須
ポイントは、裁判で特約が無効と判断されない状態であること。
そのためには、ひとえに「きちんとした特約を結ぶこと」と「特約の内容をきちんと借主に説明すること」に尽きます。
それによって、借主が合意の上で契約を結んでいることが明らかと認められれば、一定程度、借主に費用の負担をしてもらうことが可能になります。

特約の定め方

では、特約が有効と認められるためには具体的に、どのように定めればいいのでしょうか。
特約として契約書に記載する際のポイントは、次の2点になります。

 ●項目ごとに、具体的に書く
まず重要なのは、借主に補修費用の負担を求める損耗の範囲を「とことん具体的に書く」ことです。たとえばクロスであれば、「日照によるクロスの変色」「クロスの電気焼け」など、項目ごとに具体的かつ詳細に書くことです。
裁判所や国土交通省は基本的に「借主の故意・過失が原因で発生した破損・汚損以外は、貸主が補修費用を負担すべき」と考えています。
したがって、経年劣化による損耗に対して借主に負担を求めるなら、そこまで具体的に書くことが要請されていると考えたほうがよいのです。

●借主の負担金額を明記する
次に重要なのが、「借主に負担してもらう、金額を明記する」ことです。
ただ漠然と「原状回復費用は借主の負担となります」、あるいは「クリーニング費用は入居者の負担となります」と記載されている契約書をよく見かけますが、これでは裁判で勝てる可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
なぜなら、借主が「明確に合意したとは言えない」と判断されても仕方がないからです。
金額まで具体的に記載することで、貸主と借主が双方で条件を確認した上で合意したことが、明確な形でわかるようにしておくことが重要なのです。

「借主の負担額の設定」と「家賃との関係」について

もう一点、重要なのは借主に負担してもらう金額が「高額過ぎないこと」です。
何をもって「高額過ぎるか」とするのかはケースバイケースですが、通常は、想定される補修金額や賃料、礼金等の一時金の授受の有無などで判断されます。
たとえばファミリー物件で、補修費用の借主負担額が家賃の2倍弱から3・5倍強の場合、「高額過ぎるとは評価できない」と判断した裁判例がありますので参考にされるとよいでしょう。

 ●補修費用を借主負担とするなら…
契約書に、本契約では「原状回復の補修費用は家賃に含まれていない」ことも書いておくようにしてください。
なぜなら、補修費用は、家賃に含まれているというのが裁判所の基本的な考え方です。
したがって、補修費用を請求する場合は、それが家賃に含まれていないことを明記しておくことが重要なのです。
以上のポイントに留意しながら、各地域の実情やオーナー様の実務に合わせて、契約書を作成していただければと思います。
このブログが原状回復トラブルの一助となり、よりハッピーな「大家さん」と「入居者さん」の関係づくりに、少しでもお役に立てば嬉しく思います。

※リンク
「ガイドラインの読み方」と「特約のつくり方」①  トラブルの1位は「ハウスクリーニング費用」
「ガイドラインの読み方」と「特約のつくり方」②  どうすれば特約が有効と認められるのか?
(プロフィール)
あおき・りゅういち 1976年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。2004年弁護士登録、東京弁護士会所属。不動産管理会社・家賃保証会社・不動産オーナーと顧問契約多数。「貸主側」の弁護士として家賃滞納問題他、賃貸トラブルの解決に取り組む。講演やセミナー講師としても活躍。趣味は「物件巡り」という不動産好きで、父親から相続したマンションのオーナーでもある。

http://www.your-realestate-lawyer.com/

 

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