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入居者トラブル
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更新日 : 15/02/16

原状回復ガイドラインの読み方と特約のつくり方① トラブルの1位はハウスクリーニング費用

南青山法律事務所 弁護士 青木龍一

トラブルの1位は、「ハウスクリーニング費用」

オーナーにとって悩ましい「原状回復の問題」。
時代が変わってもトラブルはなくならず、現在も増え続けており、権利を主張する入居者も少なくありません。
なかでも、トラブルになりやすいポイントの1位に挙げられるのが「専門業者によるハウスクリーニング費用」です。

 ●なぜ「ハウスクリーニング」は、貸主負担なのか?
大なり小なり、ハウスクリーニング費用を借主負担とする賃貸借契約書が多く見受けられます。
しかし、実はハウスクリーニング費用は、基本的には「貸主が負担するのが妥当」と考えられているものなのです(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。
なぜなのか? それは、借主が通常の清掃や退去時の清掃を怠っていたケースは別として、常識的な拭き掃除や掃き掃除を行っていた場合、専門業者によるハウスクリーニングは、「次の入居者を確保するためのもの」と考えられているからです。

●なぜ、「特約は無効」と判断されることが多いのか
インターネットなどで、国土交通省の「原状回復ガイドライン」の存在や判断基準を知った借主は、「クリーニング費用を負担するいわれはない」と必ず主張してきます。
実際、私がこれまでに関与した裁判や交渉では、すべての借主が「クリーニング費用を借主負担とする特約は無効だ」と主張していました。
貸主が裁判で勝ったケースもありますが、「特約は無効」と判断されることのほうが多いのが現状です。
それは、「ハウスクリーニングは次の入居者確保のために行うもの」という考え方を論理的に否定することが難しいからです。

「クロスの張替費用」は、だれが負担すべきか?

「クロスの張替費用」もトラブルになりやすいポイントです。
たとえば、退去時にクロスに黄ばみや汚れがあるとします。
新しい入居者の募集を考えると、オーナー様としては、クロスの張替えは必須であるが、入居中に汚れたものである以上、張替費用は借主が全額負担すべきではないかと考えたいところだと思います。

●借主の故意・過失以外は、貸主の負担!
しかし、現在の裁判所や国土交通省の原則的な考え方はそうではありません。
張替費用を借主に請求できるのは、借主が「わざと」または「不注意」でクロスを汚した場合のみとしています。
その考え方からすると、クロスの黄ばみや汚れの原因が、日焼けや家電製品の設置による電気焼けなどの場合、張替費用は全額オーナー様負担となります。
それに対して、汚損の原因がタバコのヤニなどにある場合は、借主が「わざと」または「不注意」で汚したとして、オーナー様が借主に費用を請求できます。

●借主の不注意が原因でも、全額請求は不可
しかし、その場合でも、張替費用の全額を常に請求できるわけではない、というのが裁判所や国土交通省の基本的な考え方なのです。
その主旨は、時の経過とともにクロスの価値自体が劣化するものである以上、借主が負担すべき張替費用も下がっていく(新品時を100%として、毎年約16%の割合で減っていく)という点にあります。
これはたとえば、交通事故で相手の車を廃車にした場合、車が製造から3年経過したものなら、賠償額は同程度の中古車の価格でよいという考え方と同じです。
しかし、誤った理解のもとで借主にクロスの張替費用の全額を請求し、その結果、裁判になるケースが後を絶ちません。

●「借主負担」とするには、事前対策が必須 
おおざっぱな言い方になりますが、裁判所や国土交通省は「借主が原因の損耗でないかぎり、原状回復の補修費用は基本的には貸主が負担すべき」と考えているということなのです。
つまり、具体的な対策を事前に講じておかなければ、「補修費用を借主負担にすることは、本当に難しい」ことがご理解いただけると思います。

※リンク
「ガイドラインの読み方」と「特約のつくり方」①  トラブルの1位は「ハウスクリーニング費用」
「ガイドラインの読み方」と「特約のつくり方」②  どうすれば特約が有効と認められるのか?

 

(プロフィール)
あおき・りゅういち 1976年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。2004年弁護士登録、東京弁護士会所属。不動産管理会社・家賃保証会社・不動産オーナーと顧問契約多数。「貸主側」の弁護士として家賃滞納問題他、賃貸トラブルの解決に取り組む。講演やセミナー講師としても活躍。趣味は「物件巡り」という不動産好きで、父親から相続したマンションのオーナーでもある。
http://www.your-realestate-lawyer.com/

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