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入居者トラブル
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更新日 : 14/09/10

クレーム対応の秘訣②騒音のクレーム

弁護士 石川貞行

家主は平穏快適な生活空間を提供する義務がある

マンション・アパートは共同生活の場であるだけに、騒音に関する苦情が絶えません。
騒音の内容は①隣人の生活音や楽器の音、②ペットの鳴き声、③共用廊下の足音、④駐車場の車の音から公道の車騒音、電線に止まるカラスの鳴き声まで様々です。
音は「うるさい」と思えばクレームとなり、対応の仕方によっては感情論がエスカレートします。
なかには、生活音のトラブルによって起きた殺人事件もあります。
騒音問題の対策としては、まず賃貸借契約に生活を妨げる騒音を出すことを禁止事項とし、それに違反すれば契約を解除できる旨を明記しておかなければなりません。
また騒音トラブルが生じた場合、家主(または管理会社)は居住者に平穏快適な生活空間を提供する義務がありますので他人事と考えず、その解決に努力する義務があります。

生活上やむを得ない騒音は、お互いに我慢すべき

ところで、騒音はその音のレベルによって、規制されるべきか否か区分できれば簡単ですが、共同生活における音は大小だけでなく発生源、頻度、時間帯などが異なるため、騒音規制法(条例)があっても一律に数値だけで規制することはできません。
騒音というためには単に騒がしさ、やかましさだけではなく、ある目的にとって障害となるか否かという判断基準が必要となります。
共同住宅の場合は「平穏な居住」を目的として、その基準を考えることが必須となります。
そうすると生活をする上でやむを得ない騒音は、お互いに我慢すべき
という受忍限度の問題となります。
つまり、お互いさまといえる。
「社会的に忍容すべき音」は法律的には受忍限度の範囲内となり、不法行為に基づく損害賠償請求や差止請求は成立しないとされているのです。

やっかいなのは、騒音の感じ方に個人差があること

騒音問題でやっかいなのは被害の程度が主観によって左右されることです。
東京の高級住宅街では、夜間の40ホンの音を騒音だと言って差止請求をした事件があります(判決では棄却)。
また、あるマンションの居住者が階上の足音・戸の開閉音・掃除機などの音がうるさいとして、1日1万円の慰謝料を請求した判例では裁判官はその請求を棄却した上で、判決のなかで騒音の主観性について次のように説示しています。
「人間の感覚は極めて個人差の強いものであり、ある人はある音に対して何らの苦痛を感じなくても、ある人はそれを耐え難い騒音と感じることがしばしばある。法律上の違法性は証明されないとしても、現に本件訴訟を提起する程にうるさいと感じていることに十分留意し、日常生活を送るべきである」
(東京地裁 平成3年11月12日判決。「判例時報1421号87頁」)
参考にすべき裁判だと思います。

リンク

クレーム対応の秘訣①結露の被害とクレーム
クレーム対応の秘訣②騒音のクレーム
クレーム対応の秘訣③駐車場におけるトラブル
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クレーム対応の秘訣⑤「ペット飼育可」に変更すると・・・
クレーム対応の秘訣⑥赤水のクレーム
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クレーム対応の秘訣⑨「入居時の設備不良」のトラブル
クレーム対応の秘訣⑩家賃値下げ請求

プロフィール

いしかわ・さだゆき 1940年、愛知県生まれ。1972年、中京法律事務所開設。『家主・法律実務家・仲介業者のための借家トラブル解決マニュアル』『借家トラブル解決文例集』『家賃滞納トラブル解決マニュアル』ほか多数。趣味関連の著書に『名古屋周辺からの釣り船・船宿ガイド』がある。

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