「大家が主役」の時代⑪ トラブルを防ぐ入居申込書の見方
リーシングコンサルタント 沖野 元
空欄が多いのは、気持ちが固まっていないから
長期の空室に悩む大家さんにとって、客付け業者から届く入居申込書ほど嬉しいものはないでしょう。しかし、嬉しさのあまり内容をよく確認せず審査のOKを出し、不良入居者を入れてしまうケースも起きています。今回は、入居申込書のチェックポイントについてお話しします。
まず、全体の6〜7割しか埋まっていない不完全な申込書を受け取ったら、そのまま受け付けるのは避けなければなりません。なぜなら、空欄が多いということはそれだけお客様の気持ちが固まっていないことの表れだからです。
この場合は、まず「未記入箇所を埋めてほしい」と客付け業者に伝えることです。 少なくとも本人や連帯保証人の生年月日、勤務先、年収などの主要な項目は埋めてもらわないと審査ができません。
読めないほど乱雑なら書き直してもらう
字が乱雑で読めないケースもあります。こういった書類を雑に記入する人は信用性の面で疑問符が付いてしまいます。
たとえ字が下手でも丁寧に書いている場合は問題ありませんが、肝心なところが読めない書類では正確な審査ができません。このような場合は、書き直してもらうようにしましょう。
また、記入欄の間違いも要チェックです。よくあるのは、勤務先の「業種」(製造業、サービス業など)という欄に本人の「職種」(事務、営業など)を書くなど、言葉の意味を取り違えているケースです。これらは業者に確認をするようにしましょう。意味が分かれば書き直してもらう必要はありません。
入居希望日は近すぎても遠すぎても要注意
通常、即入居状態での申し込みから契約までは、1週間~ 10 日くらいが適当といえます。したがって、契約希望日や入居希望日が近すぎたり遠すぎる場合は、必ず理由を確認しましょう。
例えば、3日以内に契約を希望しているなど急いでいる人は、私の経験上、あまり良くない理由でそうする場合が多いようです。また、契約希望日を申し込みから2週間後以降にしている場合もありますが、逆に遅すぎるといえます。
よくあるのが、二重家賃を嫌って遅めの契約を希望するケースです。この場合、日割り家賃の発生時期を遅らせるなどしてでも、先に契約するよう促すことをおすすめします。契約まで間が空けば、それだけキャンセルの可能性も高まるからです。
法人契約では連帯保証人に注意を
最後に法人申し込みの注意点をお伝えします。
社員30人以下の会社の場合、社長のみが連帯保証人になるのは避けなければなりません。小さな会社の場合、会社と社長はほぼ一体なので、自分が自分の保証人になるようなものだと考えてください。
この場合は連帯保証人をもう一人付けてもらうか、または家賃保証会社に申し込みをしてもらうことです。
◇入居申込書の5 つのチェックポイント
①記入欄は9 割以上埋まっているか?
②字が乱雑でないか?
③記入欄や書き方の間違いがないか?
④入居希望日が不自然ではないか?
⑤法人契約の場合の連帯保証人は誰か?
おきの・げん 日本大学大学院理工学研究科修了。大手不動産会社を経て2009年より不動産仲介・コンサルティングを行うリーシングジャパン代表取締役。一般財団法人日本不動産コミュニティー監修「不動産実務検定」の人気講師として活躍。週刊住宅新聞への連載ほか執筆・講演多数。日本最大級の女性大家の会「ローズ会」を主宰。http://www.leasingjapan.com/
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⑫キャンセル時の対応と防止策
⑬「主役になる」とは?