「大家が主役」の時代⑨「定期借家契約」導入のポイント
リーシングコンサルタント 沖野 元
前回⑧では、普通借家契約のリスクと定期借家契約のメリットについてお話をしました。おさらいになりますが、定期借家契約は「初めて貸主と借主が対等になれる契約」です。
普通借家契約とは異なり、迷惑行為や滞納を繰り返すなどの不良入居者を期間満了により立ち退き料なしで退去させることができます。これにより良好な住環境が守られ、賃貸経営の安定にもつながります。
今回は定期借家契約を導入する上でのポイントについて解説していきます。
定期借家契約の2つのタイプ
定期借家契約を導入するにあたっては、まずは大家さんご自身が、定期借家契約について理解することが大切です。定期借家契約には次の2つのタイプがあります。
①終了型:期間満了で終了し、再契約をしないタイプ。大家さんが何年後かに自分で部屋を使う予定がある場合や、建て替えを想定している場合に便利。
②再契約型:期間満了後、入居者に問題が無ければ再契約を行うタイプ。
私が導入をおすすめするのは、もちろん②の「再契約型」です。その理由をお話しします。
「再契約型」なら、長期入居が可能
定期借家契約が普及しない理由の一つは、入居者の間に「契約期間が満了したら、必ず出ていかなければならない」という誤解や不安があることです。しかし、それは「終了型」の場合だけです。
多くの大家さんは「賃貸経営を安定させるためには、優良な入居者に長く借りてもらうことが必要」ということを理解しているはずです。だからこそ「再契約型」を採用する意味があるのです。
「再契約型」であれば、問題のない入居者に対しては、大家さんから再契約したい意向を示し、入居者が希望すれば再契約となり、これを繰り返すことで長期入居へとつながります。不良入居者のみを期間満了で退去させることができるのです。
入居者のメリットを募集チラシでアピール
定期借家契約を導入する上で、入居者募集の窓口である管理会社の協力は不可欠です。
定期借家契約について十分に理解したら、担当者に導入の意思を伝えましょう。その際に重要なことは、「再契約型」にしたいという点を強調することです。
管理会社が賛成してくれたら、募集広告に定期借家契約である旨を表示してもらいます。その際、入居者にとってのメリットを記載すると、定期借家契約に対する先入観や不安を取り除くことができます。下記、記載例をご参照ください
◇記載例・定期借家契約の入居者のメリット
定期借家契約は万能ではない
なお、定期借家契約のメリットが生きるのは、物件自体に魅力があってこそです。優良な入居者に選ばれる物件力をつけることを忘れないでください。
また、定期借家契約に変えても、滞納が100%なくなるわけではありません。家賃保証会社に加入してもらうなどの対策も怠らないようにしましょう。
なお、拙著『賃貸の新しい夜明け』で定期借家契約についてわかりやすくまとめています。ぜひご一読ください。方にとっては住み心地の良い物件になります。
(プロフィール)おきの・げん 日本大学大学院理工学研究科修了。大手不動産会社を経て2009年より不動産仲介・コンサルティングを行うリーシングジャパン代表取締役。一般財団法人日本不動産コミュニティー監修「不動産実務検定」の人気講師として活躍。週刊住宅新聞への連載ほか家の会「ローズ会」を主宰。http://www.leasingjapan.com/
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