「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響③登録と改修費の補助
不動産コンサルタント 平野雅之
住宅の登録制度
改正法では、一定の基準を満たす住宅を「要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅」として、都道府県・政令市・中核市などへ登録する制度が創設されます(表2参照)。この登録は大家さんが行います。
◇表2.賃貸住宅の登録基準
※国土交通省「新たな住宅セーフティネット制度」(平成29年7月)より
また、いわゆる「シェアハウス」も一定の要件を満たせば登録できます(表3参照)。
◇表3.シェアハウスの登録基準
※国土交通省「新たな住宅セーフティネット制度」(平成29年7月)より
なお、登録基準の詳細は都道府県や市町村の「賃貸住宅供給促進計画」によって強化または緩和される場合があります。
登録できる住宅は2種類
登録可能な住宅は、①「要配慮者」のみが入居する「専用住宅」と、②一般の入居者も認めつつ「要配慮者の入居を拒まない住宅」の2種類です。
いずれの場合も1戸から登録でき、アパートやシェアハウスなどの場合でも全室を登録する必要はありません。また、受け入れる「要配慮者」の範囲について、「高齢者は拒まない」などと大家さんが限定することも可能です。
改修費用の補助制度
前記①の「専用住宅」として登録し、それを10年以上継続することを条件に、一定の改修工事費用の補助制度が創設されます(下記「補助の対象となる改修工事」参照)。
なお、前記②の住宅には補助が適用されません。
【補助の対象となる改修工事】
①シェアハウスへの用途変更
②間取り変更
③耐震改修
④バリアフリー改修
⑤居住に最低限必要な改修(3カ月以上空き家だった住宅に限定)
⑥その他、居住支援協議会が認める改修
※工事前のインスペクション費用も対象となる
補助金の限度額
かかった工事費用のうち、原則として3分の1(限度額50万円/戸)まで国から補助を受けることが可能です。ただし、工事内容にシェアハウスへの用途変更、間取り変更、耐震改修のいずれかを含む場合、限度額は最大100万円に上がります。
国とは別に地方自治体からも3分の1の補助が出る場合があり、また、独立行政法人住宅支援機構による改修融資制度も始まる予定です。なお、シェアハウスへの用途変更の限度額が高いのは、空き家の活用対策としての側面が強いでしょう。
※リンク
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響①民間賃貸が対象に!
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響②高齢単身者への支援
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響③登録と改修費の補助
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響④大家さんへのメリット
(プロフィール)ひらの・まさゆき
不動産コンサルティング会社「リックスブレイン」代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター。20年以上にわたり首都圏を中心に不動産媒介業務に携わる。総合情報サイトAll Aboutで「不動産売買」ガイドを務めるほか、LIFULL HOME’Sをはじめさまざまなメディアで情報を発信。実務者向け専門誌への寄稿、消費者向けセミナー講師なども務める。