「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響②高齢単身者への支援
「住宅確保要配慮者」が置かれている状況
「改正住宅セーフティネット法」の対象となる「住宅確保要配慮者」(以下、「要配慮者」)のなかで、特に急務となっているのは、高齢単身世帯への支援対策です。
今後10年間で約100万世帯の増加が見込まれ、そのうち約22万世帯は民間賃貸住宅での受け入れが必要とされています。
また、高齢者以外にも、若年層の収入がピーク時から約1割減少していることや、低所得世帯・生活保護受給世帯の大幅な増加なども社会問題となっており、住宅確保の必要に迫られています。
「要配慮者」の受け皿が足りない!
しかし、現実的には、本来そうした人の受け皿になるべき公営住宅の新規供給が頭打ちです。
2014年は1万戸に満たず、ピーク時のおよそ10分の1まで減少しています。そのため、公営住宅は大都市圏を中心にかなりの応募倍率となっています。
国土交通省「公営住宅の応募倍率の推移」(平成26年度)によると、倍率は下記のようになっています。
全国平均は5.8%。
東京都22.8% 東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)15.5%
名古屋圏(愛知・三重) 5.6%
大阪府10.5% 大阪圏(大阪・京都・兵庫)8.8%
公営住宅に入居できなかった多くの「要配慮者」が民間賃貸住宅を探すことになるわけです。
大家さん側の「入居拒否感」への対策
しかし、大家さん側の「要配慮者」受け入れに対する拒否感も強いものがあるようです。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が実施した調査によれば、高齢者の受け入れに対して約6割、障がい者には約7割、外国人には約6割の大家さんが「拒否感を持っている」と回答しています。
その理由として最も多いのが「家賃の支払いに対する不安」ですが、仮に大家さんが拒否しなくても、家賃債務保証会社が低額所得者や高齢者などの入居を認めない例もあります。
そこで、「改正住宅セーフティネット法」では、都道府県および市町村が地域の住宅事情に応じて「要配慮者」を支援するため「賃貸住宅供給促進計画」を策定することになりました。
※リンク
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響①民間賃貸が対象に!
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響②高齢単身者への支援
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響③登録と改修費の補助
「改正住宅セーフティネット法」の賃貸への影響④大家さんへのメリット
(プロフィール)ひらの・まさゆき 不動産コンサルティング会社「リックスブレイン」代表。宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター。20年以上にわたり首都圏を中心に不動産媒介業務に携わる。総合情報サイトAll Aboutで「不動産売買」ガイドを務めるほか、LIFULL HOME’Sをはじめさまざまなメディアで情報を発信。実務者向け専門誌への寄稿、消費者向けセミナー講師なども務める。