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相続・税金
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更新日 : 18/01/10

民法大改正と賃貸経営への影響①「敷金」と「原状回復」

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弁護士 角田智美 

施行は平成32年4月1日

「明治以来120年ぶりの大改正」と言われる改正民法が、2017年5月26日成立しました。施行は平成32年6月2日となっています。

約200に及ぶ改正点のなかから、賃貸経営に直結する内容と今後の影響についてお話しします。

民法制定後120年の間に、若干の改正はあったものの、基本的には制定時の姿をとどめてきました。しかし、その間に社会・経済は大きく変化し、時代に合わないものも多数出てきました。

時代の変化への対応と、わかりやすい法律を目指したのが今回の法改正です。改正の対象となったのは、民法のなかの債権法が中心です。

内容は大きく分けると①実務上慣習として行われていたものを法律として明文化したものと、②新制度の創設や既存の制度の改正の2種類があります。

まず、①の「明文化」による影響について見ていきましょう。

敷金制度が明文化された

賃貸人と賃借人との間でトラブルになりやすいものの代表に「敷金」と「原状回復」があります。

これまで、敷金制度は、関東地方など比較的多くの地域では実務レベルで慣習化されているにもかかわらず、法律の条文では一切触れられていませんでした。

この実情を受けて、今回の改正で初めて敷金制度が民法のなかで法律として明文化されました。背景には、トラブル防止の狙いもあると思われます。

●これまでの暗黙の制度が法律になった

改正法では、敷金(保証金と呼ぶ地域もあります)とは「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義づけています。

言い換えると、「賃借人の債務(賃料支払いの義務など)の履行を担保するために、あらかじめ賃貸人に預けておく金銭」ということです。前からある暗黙の制度が法律になったものと言えます。

これまでは法律がなかったため、実務ではこれまで判例を判断基準としてきました。

今回、長年積み重ねられた敷金訴訟の判例をふまえて、

①賃貸借契約が終了し賃貸人が物件の返還を受けた後、賃借人に敷金を返還すること

②賃借人が賃貸人に賃料などを支払わない場合、賃貸人が敷金から充当できること

これら2点が明文化されました。(民法「第622条の2」)

●実務への影響

既に敷金制度を採用している賃貸人にとって大きな影響はないと言えます。

また、敷金に関する条文が適用されるのは、「敷金を受け取っている場合」に限られます。敷金制度を採用しないことも、別の制度(近畿圏に多い「敷引」など)を採用することも否定されてはいません。

したがって、改正後も具体的な敷金の金額や充当方法、償却の有無、返還時期などは、それぞれの地域の慣習に応じて賃貸借契約書で明確に決めておく必要があることには変わりありません。

これまで敷金の慣習がなかった地域や敷引方式を採用している地域などに与える影響については、今後の動向を見ながら検討する必要があるでしょう。

※条文は法務省HP参照   http://www.moj.go.jp/content/001226886.pdf

原状回復義務の範囲が明記された

原状回復義務も新たに民法で明文化されました。これまでは賃借人の善管注意義務から当然に発生する義務と捉えられていたものが、より明確になったと言えます。

●通常損耗や経年劣化は対象外

原状回復義務の範囲は、「通常損耗や経年劣化によるものは除く」と条文で規定されました。これは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」や、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」の内容に沿ったものです。

今回の改正では、あくまでも原状回復義務という名称の義務があることを規定したにすぎません。原状回復の具体的範囲については、これまで通り、契約時にきちんと明記した上で、賃借人の合意を得ておく必要があることには変わりありません。

●オーナーチェンジやサブリースのルールも明確に

このほかにも、判例や慣習を明文化して規定の明確化が図られました。たとえば、賃貸人の地位の移転(オーナーチェンジ)や、転貸借の効果(サブリース)、賃借人の妨害排除請求権などです。

実務上の変更はありませんが、明文化されたことでわかりやすくなりました。

民法大改正と賃貸経営への影響

①「敷金」と「原状回復義務」の明文化 

②新設「連帯保証人の責任範囲」

③新しい権利「賃借人の修繕権」

(プロフィール)角田智美 かくた・ともみ

弁護士。中島・彦坂・久保内法律事務所所属。大東文化大学法学部法律学科卒業。2011年弁護士登録(東京弁護士会所属)。2014年より大東文化大学法学研究所講師を務める。民法改正に精通し、共著に『民法大改正ガイドブック:ビジネスと契約のルールはこう変わる』(ダイヤモンド社)がある。

 

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