平成29年度・税制改正のポイントその②法人税の特例の延長
大家さん専門税理士 賃貸オーナー 渡邊浩滋
1.「法人税率軽減」の延長
●中小法人の税率の軽減措置が2年間延長される
現在、年間所得800万円以下の中小法人に対する税率を19%から15%に軽減するという措置があります。これが2年間延長されました。
したがって、平成29年度の資本金1億円以下の普通法人の実効税率は次のとおりとなります。
・所得400万円まで:21・42%
・所得400万円超〜800万円:23・20%
・所得800万円超:33・80%
ご参考までに、法人税率の軽減措置は公益法人、協同組合、人格のない社団なども対象となります。
※人格のない社団とは、法人でないが法人と同様の活動をしている団体で、学校のPTA、研究会やクラブ、マンションの管理組合、労働組合、法人化されていない学術団体などもこれに該当し、収益事業に対しては法人税や消費税などが課税されます。
◇延長:平成31年3月31日まで
●対策のポイント
中小法人に対する軽減税率が維持される一方、個人の場合は、所得が330万円を超えると所得税・住民税で税率が30%を超えてしまいます。したがって、個人でなく法人で物件を購入して法人税を払ったほうがお金が残るケースは増えていくことになります。したがって、今後も物件を法人で取得するニーズは高まっていくでしょう。
「事業用資産の買い替え特例」の延長
●適用期間が3年間延長
10年を超えて保有する事業用資産を譲渡し、新たに事業用資産を取得した場合、譲渡した事業用資産の譲渡益について最大80%まで課税を繰り延べするという制度があります(土地の場合は300㎡以上などの要件があります)。つまり、今支払わなくてはならない譲渡所得税を先送りすることができるわけです。この適用期間が3年間延長されました。
この特例の適用を受けるためには、譲渡資産と買い換え資産がともに事業用であることのほかにも要件がいくつかありますのでよく確認する必要があります。
◇延長:平成32年3月31日まで
3.「欠損金の繰越期間」の延長
●繰越期間が10年に延長
さらに、平成28年度の税制改正で法人の欠損金(赤字)の繰越期間が、現行の9年から10年に延びることが決まりました。個人の所得税の純損失の繰越控除は3年間ですから、ここでも法人が有利になります。
◇適用:平成30年4月1日以後に開始する事業年度から
※リンク
平成29年度・税制改正のポイントその①「配偶者控除」「配偶者特別控除」の見直し
平成29年度・税制改正のポイントその②法人税の特例の延長
平成29年度・税制改正のポイントその③固定資産税・相続税評価額の見直し
(プロフィール)
渡邊浩滋 わたなべ・こうじ
税理士・司法書士。明治大学法学部卒業。総合商社勤務を経て税理士となる。2008年、両親から危機的経営状態のアパート5棟86室を継ぎ、税理士業と並行して経営を立て直す。‘11年、独立開業。税理士・司法書士の強みを活かし、不動産のスペシャリストとして、また大家の視点から賃貸経営のアドバイスを行う。セミナー、講演多数。著書に「大家さん税理士による 大家さんのための節税の教科書」「大家さんのための超簡単!青色申告」がある。