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空室対策・リフォーム
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更新日 : 17/08/22

賃貸市場のトレンドを読み解く⑬初期費用の低減はどこまで行くか?

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プリンシプル住まい総研所長    上野典行

賃料よりも大きい、敷金・礼金の下落

競争がますます激しくなる賃貸マーケット。賃料の変更とともに話題となるのが、敷金・礼金といった初期費用の見直しです。今回は、データをもとに初期費用の変動について考察します。

過去数年間の賃料・敷金・礼金の金額はどのように変化しているのでしょうか?

図は、不動産・住宅情報サイト「HOME‘S」による、首都圏マンションの平均坪賃料・敷金・礼金の推移データを当総研で分析したものです。これによると、下落が続いていた賃料は下げ止まり感があります。

一方、敷金・礼金については、下落傾向が続いています。ゼロゼロ物件など、初期費用を抑えて転居をしやすくした物件が増えてきていることが読みとれます。

賃料を下げるには限界がある

物件の競争力をつけるためにリフォームなどを行うことは有効です。しかし、立地や間取りなどの条件が同じなら、当然、賃料の安い物件ほど成約しやすくなります。したがって、今日のように世帯数が減少し、物件供給が増えている時代には、賃料を安くすることは有効な空室対策のひとつとなります。

しかし、多くの賃貸物件はローンを組んで先行投資しているため、賃料を下げるにも限界があります。月々の借入金の返済額を下回る賃料設定、いわゆる逆ザヤとなってしまうからです。

そこで賃料は変えずに、一時金である敷金・礼金を調整して価格競争力を上げようという動きが継続して続いているようです。

礼金は下げ止まり

次に、図で礼金の変動を見てみましょう。この一年ほどは、やや下げ止まり基調ともいえます。この背景には、厳しい賃貸事情があります。

前述のように、月々の家賃を値下げすることに限界を感じたオーナーは、競争力を高める代替策として、初期費用を下げて入居しやすくしてきました。しかし、この方法も、経営上難しくなってきているといえるでしょう。また、預り金である敷金から礼金に名目変更しているオーナーも存在します。こうした動きも、礼金下げ止まりの一因となっています。

敷金はますます下落傾向に!?

昨今では、敷金から退去時の原状回復費用を差し引く場合、たとえ特約があっても、減価償却分まではなかなか請求できなくなっています。平成29年5月に成立した民法改正法(施行は改正法成立から3年以内)でも、原状回復時の貸主・借主の負担の範囲が明文化されました。オーナーとしては「貸したものは元どおりにして返してもらうのが当たり前」というこれまでの発想ではいられなくなってきました。そうした背景も含めて、今後、敷金が、より下落していく可能性があります。

賃貸経営は厳しい環境のなか、時代の変化に対応しつつ賢明な対策が求められているといえます。

※リンク

賃貸市場のトレンドを読み解く
①あなたの物件は、男性向き?女性向き?
②賃料値下げより、付加価値のアップを!
③「貸してあげる」から「借りていただく」に
④ページビューから見える入居者の本音
⑤入居者の生活水準は上がっていない
⑥今どきの大学生の事情
⑦同棲カップル入居時の注意
⑧LDKはなぜ人気なのか
⑨震災を境に変わった部屋探しの条件
⑩今どきの入居者が求める設備
⑪入居者に選ばれる不動産会社と付き合う
⑫家賃滞納、とるべき対策は?
⑬初期費用の低減はどこまで行くか?

(プロフィール)

上野典行 うえの・のりゆき 慶應義塾大学卒業後、リクルート入社。住宅情報誌編集長、スーモ等の商品・事業開発責任者、賃貸営業部長などを歴任し、2011年退社。
翌年よりプリンシプル・コンサルティング・グループにて現職。生活情報サイトAll Aboutの「賃貸」「土地活用」ガイド。全国で講演・執筆・企業コンサルティングを行う。http://www.principle-sumai.com/

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