円満相続の秘訣と家族会議その①なぜ家族会議が大切なのか?
DAMAYA COMPANY株式会社代表取締役/賃貸オーナー 木本 孝広
家族会議を始めたきっかけ
どのご家庭も年末年始には様々な恒例イベントがあると思います。木本家では家族会議がその一つになっています。よりよい相続を実現するために行っているもので、「夢を語る会」と名付けています。
デリケートなテーマを親子でオープンに話し合うにはどうすればよいのか? そもそもなぜそんな名前をつけたのか、また、何を目指して、どのように実施しているのかについてお話しします。
家族会議を始めて5年になります。きっかけは、父とその兄(私の叔父)の争族を目の当たりにしたことで、「同じ思いは絶対にしない」と誓いました。
木本家は兵庫県宝塚市に本拠を置く代々の農家ですが、祖父の代から賃貸経営を始めました。祖父の死後、息子2人が遺産分割で揉め、裁判でようやく決着しましたが、兄弟の仲が修復されることはありませんでした。
もめなくてすむ方法とは?
父も叔父も悪い人ではないのに、なぜもめたのか? 原因は3つあったと思います。
1つ目は、主な遺産が不動産だったため、分割しにくかったことです。
2つ目は、被相続人(祖父)の準備不足です。相続税対策を行わず、遺言も残さなかったため、父たちは遺産分割でもめた上に納税資金の調達にも苦労しました。
3つ目は、相続人(父と叔父)が自分の意見に固執したことです。長男で戦中派の叔父は伝統的な「長子相続」の考えが根強く、戦後生まれの父は「兄弟は平等であるべき」と主張。そのため意見が衝突し平行線をたどったままになりました。
●遺産の使い道を勝手に思い描いていた
さらに、祖父の生前から、兄弟それぞれが相続後の遺産の使い道を勝手に思い描いていたことも、分割協議がこじれた要因だと思います。一度も話し合わないまま、それぞれの思いが強固になっていました。
当時、叔父は60代後半、父は50代後半。もっと頭が柔軟な若いうちに話し合っていれば、結果は違っていたかもしれません。
以上のことから、「争族を回避するには、親と子が早期に話し合うしかない」と考えました。
「早いうち」「元気なうち」とはいつなのか?
相続について話し合う家族会議は、「できるだけ早く」「親が元気なうちに」開くのがよいと言われます。では、具体的な適齢期はあるのでしょうか?
木本家で家族会議を始めたのは、サラリーマン大家だった父が定年退職した60歳の時。長男の私は38歳でした。個人差がありますが、思考が柔軟で体が元気でいられる年齢の目安は、サラリーマンが第一線を退く「60歳」だと思います。親がこの年齢に達した頃が、家族会議をスタートさせる時期と考えてはいかがでしょうか?
※リンク
円満相続の秘訣と家族会議
その①なぜ家族会議が大切なのか?
その②会議の進め方とリーダーの役割!
その③夢実現のために資産をどう生かすか?
(プロフィール)
木本 孝広 きもと・たかひろ
賃貸オーナー。1973年兵庫県宝塚市生まれ。大学卒業後、東邦レオ(株)入社。都市緑化事業に従事し屋上庭園のプロデュース等を行う。2 0 1 3 年、不動産賃貸事業D A M A Y ACOMPANY(株)設立。築45年の長屋をリノベーションした賃貸住宅、カフェ併設のコミュニティ型賃貸マンションをオープンするなど、賃貸事業を通じてまちづくりを実践する「つくる賃貸」を提唱し実践中。