「高齢者入居」、私はこう受け入れているその②入居前・入居後のリスク対策
合同会社ONE by ONE代表 賃貸オーナー 左京博志
入居に向けた事前準備、6つのポイント
一人暮らしの「高齢者入居」に際しては、事前準備を周到に行うことが大切です。ポイントは次のとおりです。
●面談でのヒアリング
面談では、家賃の支払い能力や持病、また、コミュニケーション力も確認します。部屋に引きこもらず、近隣住民と人間関係が築ける人なら、孤独死で発見が遅れるリスクは低くなります。
●定期借家契約にする
認知症や健康状態の悪化などにより退去をお願いせざるを得ない可能性を踏まえて、定期借家契約にするのが望ましいと言えます。私は基本的に 1 年間の再契約型にしていますが、生活保護を申請中の方に限り、初回は 3 カ月とし、申請が下りた後は 1 年間としています。
●滞納対策として保証会社を活用
保証能力のある連帯保証人がいない場合は、家賃保証会社を利用しています。
●緊急連絡先の記載を必須にする
緊急連絡先とは、病気、入院、死亡など、入居者に何かがあった時に対応してもらう人の連絡先です。確実に連絡がつき、かつ、緊急時にきちんと対応してもらえる関係であること、そして、すぐに駆けつけられる近距離に住んでいることが必須条件です。
緊急連絡先の住所や電話番号は変わる可能性があるため、定期的に(再契約の時がおすすめ)確認・更新することが大切です。
●残置物について取り決めをしておく
入居者の死後、オーナーが勝手に残置物(家財道具など)を処分することは法律で禁じられています。そこで、遺品整理に来てくれる親族がいない場合、残置物の処分についてあらかじめ決めておく「死後事務委任契約」を入居者と結ぶくようにしてください。
●万一に備えて保険に加入する
室内で亡くなる場合に備えて、原状回復費用、および死後の部屋の修繕や遺品整理、葬儀費用などを一定額補償する少額短期保険に加入します。その際、死亡理由(病死か自殺か)による補償の違いについても確認が必要です。
入居中は、見守りシステムで状況を把握
孤独死を未然に防ぐなど、万一に備えて見守りは欠かせません。近所付き合いが希薄な現代ですから、なかなかむずかしいところです。
そこで、おすすめしたいのが見守りシステムです。ホームセキュリティ会社をはじめガス会社、通信会社などさまざまな企業や団体が提供しています。
私が利用している見守りシステムは、トイレのドアなど必ず利用する場所にセンサーを取り付けておくと、丸1日利用がない場合はメールで連絡が来るしくみになっています。
●拒絶された場合の対応
見守りシステムの導入に対して、「監視されたくない」「面倒くさい」などと拒絶する方もおられます。その時は自分で操作する必要はないことや、見守りの趣旨を根気強く説明しています。「死後、迷惑をかけたくない」と思っている方が多いので同意してくれるケースがほとんどです。
ただし、高齢になった従来の入居者に設置をお願いする場合は、抵抗されることも多く、ていねいな説明が必要です。
●費用負担はケースバイケース
私の会社で提供している見守りサービスの利用料は、1 戸あたり月額2000〜3000円です。全額オーナー負担、入居者と折半、全額入居者負担(家賃に含める)など、費用については入居者の経済事情を踏まえて決めています。
●見守りシステムが作動した事例
当社の見守りサービスを設置しているAさん(80歳)の部屋で異常を知らせるメールが届き、電話をしても出なかったためオーナーが現地へ。電気もストーブもつけっぱなしの状態で倒れておられ、救急車で病院に搬送しましたが、3日後に亡くなりました。発見が早かったため、室内での死亡や部屋の汚損を防ぐことができました。
「高齢者入居」のリスク回避のポイント!
<入居前に行うこと>
・定期借家契約を行う
・家賃の滞納対策として保証会社か連帯保証人をつける
・確実に連絡が取れる緊急連絡先を聞いておく
・残留物の取り扱いについて取り決めをしておく
・保険に加入してもらう(孤独死に対応するもの)
<入居中に行うこと>
・見守りシステムを作る(見守りサービスの利用、新聞・牛乳配達業者と連携など)
・管理会社と連携をとりながら状況を把握する
※リンク
「高齢者入居」、私はこう受け入れている
その①増え続ける高齢者の賃貸ニーズ
その②入居前・入居後のリスク対策
その③知っておきたい、万一の時の対処法
(プロフィール)
左京博志 さきょう・ひろし
1978年、北海道旭川市生まれ。合同会社ONE by ONE 代表、賃貸オーナー。2003年、システムエンジニアとして会社勤めのかたわら賃貸経営を開始。2012年、独立して現職に。高齢者などの独居入居者対策に精通し、実践に裏付けられたセミナーや執筆が好評。日本不動産コミュニティのコンサルタントとしても活躍中。家賃滞納問題、法的トラブル対応、賃貸経営のIT化などにも定評がある。
http://onebyone.jimdo.com/