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相続・税金
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更新日 : 17/05/01

資産を守り、未来につなげる「家族信託」その②「成年後見制度」とどこが違うのか?

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宮田総合法務事務所 代表司法書士  宮田浩志

認知症発症後も相続対策ができる

読者の皆様のなかには「認知症を発症した後の財産管理なら、成年後見制度でもよいのでは?」と思われる方もおられるかもしれません。

成年後見制度とは、後見人が支援にあたることによって、認知症や障がいなどで判断能力の不十分な人が財産管理や身上監護(入院や施設入所の手続き、介護サービスの申し込みなど)で不利益を被らないようにする制度です。

成年後見制度と「家族信託」は、財産の取り扱いなどの点で関与できる範囲が大きく異なります。具体的に見てみましょう。

●成年後見制度の場合

成年後見制度の趣旨は、本人の権利と財産を守ることにあります。そのため後見人が行えるのは、本人の利益に直結する行為に限定されています。例えば、相続税対策は、相続人の利益であって本人の利益には直結しないので行うことはできません。

●「家族信託」の場合

「家族信託」は、あくまで家族内の契約であり、家庭裁判所のような公的な監督機関が関与するものではないため、相続税対策も含め、本人が望むことは原則として制約を受けません。身上監護の観点から、家族信託と成年後見制度を併用するケースもあります。

以下に、「家族信託」と「成年後見制度」の違いがわかるように、比較のポイントをまとめておきます。なお、「成年後見制度」には法定後見制度と任意後見制度があります。ここでは委託者本人が元気なうちに後見人を選任し契約を結ぶ任意後見の場合にしています。

●「家族信託」と「任意後見制度」の比較のポイント

①財産の運用・有効活用

・家族信託:委託者(受益者)の希望に沿った資産運用・有効活用が可能。

・任意後見制度:財産の現状維持が前提で増やすことを求められていないので、資産の運用や有効活用はできない(生前贈与も不可)

②不動産の処分(売却、建替え)

・家族信託:受益者が実現したい希望(=信託目的)に沿った中で受託者の判断で処分できる。

・任意後見制度:被後見人の生活に必要な財産処分(例えば介護費用の捻出のための自宅売却)のみ可。

③悪質業者や詐欺への対応

・家族信託:信託財産は受託者たる子の手元で管理されるので被害は最小限に抑えられる。

・任意後見制度:本人が結んだ契約の取り消しを任意後見人は取り消すことができない。

④遺産相続の手続き

・家族信託:口座凍結を回避できる。信託の継続により相続手続きは不要。

・任意後見制度:被後見人の死亡をもって後見業務は終了し、遺産相続手続きは別途必要になる。

⑤受託者や後見人に対する監督機関

・家族信託:必置の監督機関はないが、任意で「信託監督人」を置くことが可能。

・任意後見制度:家庭裁判所が必ず「任意後見監督人」を選任する。

先々の相続先を指定できる

次に死後の相続について見ていきます。残された家族に面倒な遺産分割協議をさせることなく、円滑な資産承継を実現する手立てとしては遺言が代表的です。しかし、「家族信託」を活用すれば、遺言ではできない指定を行うことも可能です。2 つの指定範囲は次のとおりです。

●遺言で指定できるのは一代限り

遺言で指定できるのは、直近の資産承継者のみです。つまり、一代限りの承継者の指定で事足りる場合は、遺言で問題ありません。

●「家族信託」は二次相続以降も指定できる

一方、「家族信託」は 2 次相続以降の資産承継先も指定できます。例えば、自宅と賃貸アパートの相続先を配偶者にして、配偶者亡き後は、自宅を長男、アパートを二男に承継させるといったことが可能です。

この方法なら、将来、配偶者が改めて遺言を残さなくても、資産承継の道筋を自分一人でつけることができます。希望に沿った円滑な資産承継を目指すオーナー様にとって、大いに活用できる手法です。

※リンク

資産を守り、未来につなげる「家族信託」
その①「家族信託」のしくみとメリット
その②「成年後見制度」とどこが違うのか?
その③「家族信託」の上手な使い方

(プロフィール)

宮田浩志 みやた・ひろし
宮田総合法務事務所 代表司法書士。認知症高齢者や障がい者の成年後見人や後見監督人に現在50件前後就任中。その豊富な経験を生かし、家族信託・遺言・成年後見制度等の仕組みを活用した高齢の不動産オーナーや会社経営者等に対する認知症対策・円満円滑な相続対策のコンサルティングでは先駆的な存在。日本屈指の組成実績と相談件数を持ち、全国で一般向け・専門家向けのセミナー講師も多数。著書に『相続・認知症で困らない家族信託まるわかり読本』がある。(一社)家族信託普及協会 代表理事、  (一社)日本相続学会 理事。

宮田総合法務事務所 http://legalservice.jp/
個人信託・家族信託研究所 http://www.trust-labo.jp/
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