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相続・税金
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更新日 : 16/08/15

「家族を幸せにする遺言書」のつくり方その③思いがけない相続の落とし穴! 

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有限会社アルファ野口 代表取締役
相続コーディネーター 野口賢次

法人の相続は、後継者の経営能力を見極めて

オーナー様のなかには、賃貸経営を法人化している方も多いと思います。苦労して発展させてきた会社を我が子に託したいと思うのは、親として当然でしょう。

事例4「経営能力のない子に会社を相続したケース」

Dさんは遺言書により、息子3人のうち長男に会社経営を託しました。二男、三男は、わずかな代償分割金(ハンコ代)をもらっただけでした。ところが会社は間もなく倒産。Dさんが会社に個人保証をしていたため、保証人の地位は、経営とは無関係の二男、三男にも引き継がれてしまいました。

こんな悲劇を生まないためにも、後継者選びは情に流されず、適性を冷静に見極めることが大切です。

事例5「借金して建てたアパートの相続」

ほかにも、ぜひ知っておきたい事例があります。

近年、相続税対策として借金をしてアパートを建てる方が増えています。

たとえば1億円で建てたアパートの相続税評価額は建築費の半分以下となりますが、借金の評価は1億円のままです。その差によって節税効果が生じるわけです。こんな事例がありました。

遺言書に従い、3人兄弟の長男がアパートを相続しました。3人とも、建築費の債務は当然、長男が相続するものと思っていました。

しかし、実際には遺言書に関わりなく、債務は法定相続人全員が法定相続分で相続することになります。二男、三男が債務から離脱できるのは、長男が一人で債務を引き受けること(免責的債務引受)を銀行が認めた場合に限られます。節税対策として借金をしてアパートを建てる場合は、この点も踏まえて検討することが必要です。

遺言書は相続税や土地活用を考えて作成を

地主様のなかには、財産の大部分が土地で、現金が少ないという方もおられるかと思います。その場合、相続税納税のために土地を売却することにもなりかねません。

これまで、地主様の遺言書を多数見てきましたが、相続税や相続後の土地活用を踏まえて書かれたものはごくわずかでした。

地主様には、残された人の税負担のことはもちろん、土地活用を考慮して遺言書を作成していただきたいと思います。

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相続人が認知症や行方不明の場合は?

最後に、遺言書がないと相続手続きに大きな支障をきたす例をお話しします。

遺言書がない場合、法定相続人が全員集まって遺産分割協議を行うことになります。もし、行方不明者がいると手続きは前に進みません。また、法定相続人が認知症を発症している場合は、まず成年後見人を付けなければ遺産分割協議ができません。相続税の申告・納税のタイムリミットは、10カ月という短期間です。

しかし、このような場合、遺言書で他の相続人を指定しておけば遺産分割協議は不要となります。

このように、スムーズで円滑な相続をするためには、遺言書の作成がいかに重要かおわかりいただけたことでしょう。

遺言書は「公正証書遺言」のほうが確実

なお、せっかくの遺言書が内容の不備で使えなければ元も子もありません。

主な形式に、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが(図1参照)、確実なのは後者です。いったん「自筆証書遺言」を作成した場合でも、後日に「公正証書遺言」でつくり直すことをおすすめします。

「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の違いは、以下の通りです。

◇「自筆証書遺言」

〈メリット〉
・費用がかからない
・いつでも作成や書き直しが可能
・遺言の存在や内容を秘密にできる

〈デメリット〉
・不備が多く無効になりやすい
・紛失・廃棄される恐れがある
・家庭裁判所の検認(証拠保全作業)が必要

◇「公正証書遺言」

〈メリット〉
・無効になる可能性が極めて低い
・紛失、廃棄、改ざんの恐れがない
・再発行ができる
・字が書けなくても口授(口述)で作成できる

〈デメリット〉
・公証人手数料がかかる
・証人が必要(2名)
・遺言の存在や内容を秘密にできない
・作成までの準備に時間がかかる

遺言書は本来、相続人全員を幸せにするためのものです。この点を忘れずに、相続人一人一人の思いに配慮しつつ、大局的な視点に立ってつくることが大切です。

※リンク
「家族を幸せにする遺言書」のつくり方その①相続における「平等」と「公平」とは?
「家族を幸せにする遺言書」のつくり方その②不満が残らない財産の分け方とは?
「家族を幸せにする遺言書」のつくり方その③思いがけない、相続の落とし穴!

(プロフィール)
のぐち・けんじ 50歳を契機にガソリンスタンド経営から相続の実務家へ転身した異色の存在。「相続特化型不動産業」をビジネスモデルとして確立し、相続人の幸せを守る「心の相続」を提唱。多数の実績をもつ相続コンサルティングの第一人者。相続実務学校「野口塾」塾長、NPO法人相続アドバイザー協議会副理事長として、実務家養成にも情熱をそそぐ。『心をつなぐ相続』ほか著書も多数。

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