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相続・税金
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更新日 : 16/04/25

資産を殖やす「資産組み換え講座」⑦自宅の権利調整

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税理士・中小企業診断士 飯塚美幸

住宅の買い替えをしたいけれど

H様は二人兄弟の長男。母上の所有地に住宅ローンで家を建て、3人の子と夫婦で居住中です。母上は、土地についてはH様に相続させるつもりで、隣の市のマンションで、年金とお稽古教室の収入で、悠々自適のおひとり様生活。妹様は、結婚してご主人の住宅に暮らしています。

H様のお子様の高校進学は2年後。住宅ローン残額が少なくなってきたため、そろそろ家を買い換えたいと思っています。それも、できればもう少し都心部へという希望です。ところが、買い換えたい地域の住宅はどれも高額。現在のご自宅は売却すると、築20年の中古家屋は値上がり益はありませんが、土地は母上所有であるために、土地売却益に20%の譲渡税がかかってしまいます。

母上に相続税はかかる?

母上に所有資産をチェックしていただくと、現在住んでおられるマンションとH様の自宅敷地と若干の金融資産が財産内容です。結婚して舅様の家に住んでいる妹様が将来母上の住むマンションを相続して、小規模宅地特例を適用すれば、相続税の非課税枠に収まりそうです。

相続時精算贈与課税で生前贈与

そこで、一計。母上の敷地部分をH様が生前贈与を受けてしまいます。それも「相続時精算課税贈与」で。これは60歳以上の親から20歳以上の子へ届出のうえ贈与した場合は、贈与評価額から2500万円を控除したうえ、超える部分は20%の贈与税負担で済み、相続の際に、相続財産に贈与評価額を合算課税して贈与税を精算する制度です。

敷地評価額は3000万円ですので贈与税が100万円かかりますが、これで晴れて、土地家屋ともにH様の名義にできます。将来の相続時に贈与税は還付されます。

2年後の買い換えで、居住用財産譲渡特例適用

2年後に現在の土地家屋を売却、買い換えすれば、全部がH様自身の居住用財産の譲渡となり、所有期間が10年超であることから、次のいずれかの特例が使え、税金を最小限に抑えられます。

①  譲渡利益から3000万円を特別控除し、超えた所得については6000万円まで14%低税率負担

②  買換資産の額まで譲渡税を繰り延べできる居住用財産の買換特例

贈与直後に譲渡すると、譲渡代金の贈与とみなされるかもしれないので注意します。

遺言書とセットで

贈与にあたって、母上はH様に自宅敷地は生前贈与するけれども、母上の住むマンションは妹様に遺贈する旨の遺言書を書きました。

ご兄弟は母上への感謝のために食事会を開催。十数年、別々に暮らしていた親子が贈与契約書と遺言書を読み上げ、ご兄妹は母上に花束を贈呈。思えば、母上への花束は子供時代の母の日以来。花束とともに、家族の絆が再び結ばれたようです。

※リンク

資産を殖やす「資産組み替え講座」
①再建築不可の旗竿地の蘇生
②賃貸マンションの名義は法人? 個人?
③売却は売りやすい土地から?
④路線価の高い土地と低い土地の交換
⑤未分割法定相続共有の解決
⑥「とりあえず共有相続」の解決
⑦自宅の権利調整
⑧「相続後の有利売却」と利息の経費化
⑨「アパートの贈与」で収益力を増加
⑩「会社借金の肩代わり」と事業転換
⑪「片割れ交換」でWin・Win・Win
⑫売りにくい土地を有利に売るために

(プロフィール)
いいづか・みゆき
税理士、中小企業診断士、事業承継協議会会員、千代田区議会諮問委員、不動産コンサルティングマスター試験委員、成年後見人東京家庭裁判所登録員
静岡生まれ。静岡大学人文学部卒業、平成7年飯塚美幸税理士事務所開業/エクスプレス・タックス株式会社設立、平成22年松木飯塚税理士事務所、平成25年松木飯塚税理士法人設立、代表社員就任、現在に至る。
主著として「小規模宅地特例−実務で迷いがちな複雑・難解事例の適用判断」(清文社)、「税理士のための相続税実務−贈与税各種特例」(中央経済社)、「財産を殖やすための相続対策プログラム」(日本法令)、共著として「平成27年度よくわかる税制改正と実務の徹底対策」(日本法令)、「『資本の部』の実務−改正商法・会計・税務」(新日本法規出版)などがある。

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