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入居者トラブル
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更新日 : 16/02/01

「家賃減額請求」解決の方法その②空室による損失を見極めて、柔軟に対応する

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弁護士 石川貞行

テナントに賃料値下げを求められたら、どう対応するのが賢明か

特に飲食店などで多くみられるのが、「売り上げ減少により現行賃料では経営が苦しいから値下げしてほしい」という賃料減額請求です。経営不振は、賃借人の個人的な経済事情ではありますが、不況という経済事情の変動の影響が背景にあることから、減額事由として無視することはできません。

●減額を拒否した結果、空室による損失が増加しないか・・・

家主としては、このような値下げ請求に対し、借地借家法第32条1項に該当する理由がないとして拒否することもできます。しかし拒否した結果、賃料滞納による解除・解約・退去となった場合、その後のテナントが現行賃料で速やかに決まるかどうかは疑問です。もし決まらない場合は、かえって空室による損失が増加することになります。

賃料減額請求には柔軟に対応するのが賢明だといえます。

ある程度の値下げに対応するのか、値下げはしないが一定期間、賃料の一部の支払いを猶予するのか、先の見通しを見極めて結論を出すべきだと思います。

サブリース契約での賃料減額請求は、最高裁判決を指針に

賃借した建物を転貸して、賃料と転貸料の差益を得る目的の賃貸借契約をサブリース契約といい、借上げ型、共同事業型などの形態があります。いずれの場合も、社会的弱者である借家人の保護を理念とする借地借家法とは相容れない事業者間の契約であるため、借地借家法第32条1項の適用の可否をめぐっては論議のあるところです。

従来、サブリース契約の当事者および契約的実体から、同法の適用を全面的に否定する説、また一方では、サブリース契約でも賃貸借契約の要素を有しているから同法の適用があるとする肯定説を両極として、諸説ありました。

この問題について最高裁は、平成15年10月21日、借地借家法第32条1項の適用を認める判決を下し、実務に大きな影響を与えております。

●サブリースの場合、適正賃料の判断は総合的に

この最高裁判決は、借地借家法制定の立法趣旨に関係なく、ある建物を使用収益させ、その対価として賃料を得るという点では建物賃貸借契約であることから、同法の適用があるとしています。

その上で、サブリース契約の場合はその特殊性から、賃料の減額請求があった際、その適正賃料の判断については単に賃料額決定の経緯や賃料相場の変動だけではなく、契約時の転貸事業の収支予測、借入金の返済予定なども踏まえ、総合的に考慮すべきであるとしています。

●最高裁判決では、検討事項が具体的に示されている

この判決が出る以前は、たとえばバブル崩壊などによりサブリース業者が得る転貸利益が減少し逆ザヤになったケースでは、サブリース契約の当事者の利害調整をはかるために「事情変更の原則」「信義誠実の原則」「公平の原則」などにより、賃料減額請求が妥当かどうかが検討されていました。

最高裁判決は、その検討事項を具体的に示したものとなっており、今後の実務の解決指針として参考にすべきでしょう。

 

※リンク
「家賃減額請求」― 解決の方法その① 賃料減額は、「公平の原則」によって判断を
「家賃減額請求」― 解決の方法その② 空室による損失を見極めて、柔軟に対応する
「家賃減額請求」― 解決の方法その③ 減額請求における、賢明な選択とは?

 (プロフィール)
いしかわ・さだゆき 1940年、愛知県生まれ。1972年、中京法律事務所開設。『借家トラブル解決文例集』『家主・法律実務家・仲介業者のための 借家トラブル解決マニュアル』(六法出版)、『家賃滞納トラブル解決マニュアル』(全国図書出版)、『入居者のための借家トラブル』(同)ほか、趣味関連の著書に『名古屋周辺からの釣り船・船宿ガイド』(ひかりの国社)がある。

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