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更新日 : 15/10/12

吉田修平先生に聞く、「定期借家」活用のメリットQ&A①

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「借りたものは期限がきたら返す」、合理的な「定借」の利点

答える人 弁護士 吉田修平

更新料問題など賃貸オーナーを取り巻く環境が厳しくなるなか、「定期借家」(以下、「定借」)が次第に注目されています。「定借」の今日的な意味はどのような点にあるのでしょうか?

まず知っておいていただきたい大事なことは、「定借」誕生の主旨にあります。

●あまりにも借主の保護に傾き過ぎている、従来の「普通借家」

その背景には、従来の普通借家(正当事由、及び法定更新制度)は、あまりにも借主の保護に傾き過ぎ、「対等な当事者間の契約」という賃貸契約の趣旨が忘れられる傾向が見られました。そのため、個人のオーナーが「貸家ビジネスは恐くて手が出せない」という考え方に傾き、借家の普及率が大きく減ってしまったということが過去にありました。「定借」は、そうした事態に対するアンチテーゼとして誕生しました(平成12年3月施行)。近年、「定借」が注目されているのは、様々な時代の変化のなかで、その良さがあらためて見直されているからだと思います。

●「定借」は、「借りたものは期限がきたら返す」というシンプルな契約

住環境の点からみると、何十年か前と比べると日本の住宅事情は遥かに良くなり、家主と借主を対等に扱う「定借」が普及しやすい時代になっているといえます。また、「借りたものは期限がきたら返す」という、極めてシンプルかつ原理原則にのっとった「定借」の登場により、良質な借家が多く供給されるようになってきたともいえます。

これからの時代は、シンプルで分かりやすい契約が求められると思いますが、「定借」はそんな時代のニーズにマッチしたものであり、今後ますます活用されていくものと考えられます。

Q1.家主にとって、「定借」活用の一番のメリットはどんな点にありますか?

●「普通借家契約」は、契約違反があってもなかなか契約を終了できない

第一に、不良入居者に退去してもらうことが容易だという点です。

不良入居者とは賃料をしばしば滞納する人、騒音を発生させたり、ゴミ出し規則を守らない、飼ってはいけないペットを飼うなど共同住宅のルールを守らない人たちです。家主は当然、不良入居者を排除したいと考えますから、普通借家契約では一般的に禁止事項を明記し、反した場合は債務不履行(契約違反)として契約を解除し、退去させることができる旨が定められています。

ところが、我が国の判例には「信頼関係破壊の法理」というルールがあり、契約違反があっても家主と借主との信頼が破壊されたと認められないときは、契約を終了できないものとされています。

●不良入居者と再契約しないという形で、退去してもらえる

その結果、前述のような不良入居者でも、裁判でそれを証明することには困難が伴いますし、仮に証明できても「確かに形式的な契約違反はあるが、未だ両者の信頼を破壊する程度には至っていない」として、契約解除を認めない判例も多く見受けられます。例えば、1、2カ月の賃料の不払いでは、なかなか契約解除は認められず、なかには5カ月、6カ月と滞納していたケースでも契約の解除が認めなかった判例もあります。

その点「定借」では、不良入居者に対しては、再契約はしないという形で退去してもらうことが容易にできます。つまり、普通借家契約のように契約違反の事実の証明も、その違反事実が両者の信頼を破壊する程度に達していることの証明も不要なのです。

Q2.入居者にとってのメリットは、どういう点にありますか?

共同生活のルールを守らない人は再契約されないので、入居している人は近隣とのトラブルを心配しなくてよくなります。また、オーナーのなかには、外国人や高齢者に貸すことを迷う方がおられますが、「定借」にすれば問題を解消しやすくなりますので、貸すことをためらう必要が大きく減少します。家主が貸しやすくなれば、借主も借りやすくなるといえます。

※リンク
吉田修平先生に聞く、「定期借家」活用のポイントQ&A <その1>「借りたものは期限がきたら返す」、合理的な「定借」の利点
吉田修平先生に聞く、「定期借家」活用のポイントQ&A <その2>入居者の不安を取り除く方法とは?
吉田修平先生に聞く、「定期借家」活用のポイントQ&A <その3>契約期間も賃料設定も自由度が高い「定借」のメリット。何を引き継ぐのか? 基本の心得と体制づくり

(プロフィール)

よしだ・しゅうへい

1952年生まれ。早稲田大学法学部卒業。’94年以降、建設省定期借地権活用住宅研究会・事業、管理、金融各小委員会委員。早稲田大学、神奈川大学講師。政策研究大学院大学客員教授。2004年、定期借家推進協議会・居住用定期借家マニュアル検討ワーキンググループ座長。国土交通省・マンションの新たな管理ルールに関する検討会委員。
著書に「ケーススタディ定期借地権付住宅活用マニュアル」(共著・金融財政事情研究会)、「借地借家法講座2」(共著・日本評論社)、「実務注釈・定期借家法」(都市住宅学会著作賞受賞/信山社)など。

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