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更新日 : 15/09/28

愛の満室経営セミナー⑥立ち退き交渉は、あくまで冷静に

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東京共同住宅協会会長 谷崎憲一

今回は私がまだ若かった頃、Kさんという大家さんに相談を受けた、立ち退きに関するお話です。入居者との間で立ち退きの合意がほぼ成立し、合意書にサインをする段階まできたところで、Kさんの衝動的な行動によって話が振り出しに戻ってしまったというケースです。

切れてしまったKさんの気持ちもわかるが…

Kさんは2階建ての自宅兼アパートを取り壊し、7階建マンションの建築を計画。ご自身は早々に仮住まいに引っ越しをして、すぐにも工事を始めたいという状態にありました。そこで、話し合い成立までの時間短縮を最優先にして交渉に臨み、Kさん立ち会いのもとで合意契約書にサインするところまでこぎつけました。合意内容は立ち退き料200万円で契約時に100万円、退去時に100万円をKさんが入居者に支払うというものでした。

しかしKさんは、合意をしたものの内心ではそんな大金を支払うのがおもしろくなかったのでしょう。当日、合意契約時に支払うことになっていた100万円をポケットから取り出すや、なんとその入居者に投げつけてしまったのです。

交渉は決裂し、話し合いは振り出しに

当然、入居者は怒り、契約を拒否。交渉は決裂してしまいました。交渉は結局、最初からやり直しになり、私が間に入って話し合いをしましたが、一度切れた感情は簡単には戻らず、立ち退きが成立するまでにさらに1年ほどかかってしまいました。

Kさんは立ち退き料200万円と聞いて、あらためて「いったい何年分の賃料になるのだろう」と思い、悔しくなったのでしょう。気持ちはわかりますが、取り返しのつかない、やってはならないことをしてしまいました。

賃貸事業において、1年間の損失はただでさえ大きいものがあります。さらに運悪くその間に金利が上昇し、建築資材も値上がりし、Kさん自身の仮住まいの期間も1年延び、余分な家賃がかかりました。順調に建て替えが進んでいれば収入となっていた家賃も、入金が1年先に延び、損害は200万円どころではなくなりました。

立ち退き交渉は、冷静に損得を考えて

立ち退き交渉では、いったい何を目的として交渉しているのかをよく自覚し、常に冷静に損得を考えることが重要です。立ち退き交渉は土地を有効活用し、そこから収益を上げることが目的であり、それを達成するための話し合いです。そのことを忘れて感情的になってしまうと、Kさんのケースのようにみすみす損害を大きくしてしまうことになります。経営の視点からは、時には「理不尽な要求だ」と感じることがあっても、あえて受け入れる譲歩や英断も必要です。

※リンク

愛の満室経営セミナー

①空室の原因と管理会社の関係
②土地活用は「結婚相手選び」と同じ
③ケチケチ大家さんの悲劇
④情に棹させば、失敗する
⑤賃貸経営は人生観を映す
⑥立ち退き交渉は、あくまで冷静に
⑦好立地でも、マーケティングは必須
⑧不動産で自分の仕事を潰すべからず
⑨セカンドオピニオンという選択
⑩パートナーという関係づくり
⑪ありがとう
⑫「思いやり」と「信頼」
⑬相続で引き継ぐべきこと

(プロフィール)

たにざき・けんいち 都内で唯一の地主さん・家主さんのための団体、「公益社団法人 東京共同住宅協会」会長。15年間の相談部長を経て現職に。東京都耐震化推進都民会議委員、福祉住宅研究会主宰、NPO法人賃貸経営110番顧問など幅広く活躍。厳しいなかにも人間味のある誠実なアドバイスが人気を呼んでいる。アパート・マンションなど自らも大家業を営む。

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