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相続・税金
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更新日 : 15/08/17

アパートの「事業承継」と「後継者育成」<その2>個々の物件に即して、具体的に検証していく

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税理士・中小企業診断士 飯塚美幸

物件の把握がおろそかでは、ザルで水を汲むようなもの

賃貸経営を勉強する際、いちばんよい方法は一般論から入るのではなく所有物件の一つ一つに即して検証し、考えていくことです。まず、手始めに後継者と一緒に物件リストをつくってみましょう。個々の物件について月々の収入、経費、借入、利回り、税率、キャッシュフロー(資金の流れ)など経営に関わる数字はもちろん、契約内容、権利関係など物件に関するすべての事項を整理整頓し、自己物件が具体的にどうなっているのか把握していきます。すると全体像が見え、生きた知識として身についていきます。

●契約は一字一句、きちんと読む

何事も基本が大切。たとえば契約についていうと、自己物件の契約内容を把握していない方が少なくありません。契約書はきちんと読み、一字一句たりとも自分に不利な契約は結んではいけません。一度、きちんと確認しておくと、他の契約を行うときにも役立ち、そうした姿勢が経営改善、資産発展の原動力となっていきます。基本がおろそかでは、いくらいいアパートを建てても、いい土地を持っていてもザルで水を汲むようなものです。

必ず伝えたい、借入や財務の仕組み

よく相続税対策で借金したほうが得といわれ、まだ若いのに借金し、返済が進んで元本が減ると相続税のマイナス効果が減少します。実際のご相続では、しっかり相続税がかかるのに、借入返済で資金が残らず、古アパートと相続税だけ引き継ぐのかと、相続人様は頭を抱えます。何事も鵜呑みにせず、仕組みをよく理解して判断することが大切です。

●建てたときから修繕積み立てが必須

アパートは建築当時は初期経費で税金を落とせますし、築15年くらいまでは減価償却費分で税金が抑えられます。固定資産税も5年間は2分の1になる特例があるため、建てて5年ほど資金は潤沢です。しかし、この時期にお金を使ってしまうとあとが大変です。だんだん利息が減っていき、必ず税金がキャッシュフローを上回る時期が来ます。すると返済は変わらないのに現金が足らず、税金を払うために貯金をとりくずさなければならない状況に陥ってしまいます。また築10年、15年は大規模修繕の時期です。修繕積み立てをしていなければ、再び借金しなくてはなりません。こうした借入や財務の仕組みは、承継の際には必ず伝えておかなくてはならないことです。以下に、オーナーと後継者が基本的に知っておきたい、賃貸経営に関する知識についてまとめておきますので、参考にしてください。

オーナー&後継者が知っておきたい基本の項目

<法律・金融・税法の基本>

●法律
・民法・民法特別法(借地借家法)・会社法・宅建業法・都市計画法・建築基準法・不動産登記法・農地法・国土法
●金融
・金融システム・株式システム・金融商品
●税法
・不動産評価・固定資産税・相続税・贈与税・譲渡所得税・地方税・法人税・所得税・消費税、ほか

<財産評価・経営分析>

●財産評価(実勢価格を知る)・査定評価
●経営・財務分析
(利回り分析・総資産利益率・経費率・損益分岐点比率・キャッシュフロー分析/借入返済と税金の流れ、仕組み)
●建築運用シミュレーション
(建築・修繕コストと家賃収支予測)・資産ポートフォリオ作成(資産全体の運用、構築)ほか。

<実務関係>

●管理、メンテナンス
ハード:補修、設備点検、定期リフォーム、原状回復。
ソフト:家賃入金管理、住環境管理ほか・クレーム処理(内容と対処法)
●接客ビジネスマナー・ホスピタリティ、ほか

<その他、入手しておきたいデータ>

・固定資産税名寄せ帳・地価・賃料・判例データ、ほか

※リンク
アパートの「事業承継」と「後継者育成」<その1>何を引き継ぐのか? 基本の心得と体制づくり
アパートの「事業承継」と「後継者育成」<その2>個々の物件に即して、具体的に検証していく
アパートの「事業承継」と「後継者育成」<その3>人は、価値あるものにお金を払う

(プロフィール)
いいづか・みゆき
●税理士、中小企業診断士、事業承継協議会会員、千代田区議会諮問委員、不動産コンサルティングマスター試験委員、成年後見人東京家庭裁判所登録員
●静岡生まれ。静岡大学人文学部卒業、平成7年飯塚美幸税理士事務所開業/エクスプレス・タックス株式会社設立、平成22年松木飯塚税理士事務所、平成25年松木飯塚税理士法人設立、代表社員就任、現在に至る。
●主著として「小規模宅地特例−実務で迷いがちな複雑・難解事例の適用判断」(清文社)、「税理士のための相続税実務−贈与税各種特例」(中央経済社)、「財産を殖やすための相続対策プログラム」(日本法令)、共著として「平成27年度よくわかる税制改正と実務の徹底対策」(日本法令)、「『資本の部』の実務−改正商法・会計・税務」(新日本法規出版)などがある。

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