二極化時代を勝ち抜く方法<その3>既存物件の「ウリ」のつくり方・見つけ方
一般財団法人日本不動産コミュニティー理事 西山雄一
長所も欠点もすべてリストアップしてみる
では、既存の物件はどうすればよいのでしょうか? まずは、気づいていない、隠れた「物件のウリ」を見つけ出します。それに沿って、費用ゼロ、もしくは最低限の費用投下で打ち出し方を変えていきます。ウリの見つけるコツを上げてみましょう。
●自分の物件の長所を見つける
・思いつくことすべてをリストアップする
・小さなことでもOK
・家族や周囲の人にも聞く
・だれかと一緒に考えると意外な発見がある
・ハード(物件)とソフト(清掃、サービスなど)の両面に分けてかき出す
・欠点もリストアップする(欠点を見つけるのは簡単)
・欠点を長所に変える方法を考える(「徒歩25分、毎日歩けば健康増進」など)
・ウリがなければ、つくってしまおう etc.
●五感を使って考える
・視覚:外観や内装に色彩的な特徴はないか?
・聴覚:鳥のさえずりなどが聞こえてこないか?
・嗅覚:近隣の宅配サービス、グルメスポットなどの紹介
・触覚:ふかふかのカーペット、木のぬくもり etc.
●特に強いウリとなる項目
・利便性:駅、学校、病院、コンビニに近いなど
・耐震性:耐震補強をしたらなら、それをアピール
・防災:大家さん負担の防災袋、避難マニュアルなどがある
・セキュリティ:TVモニター、防犯設備などがある etc.
「自分でも忘れていた、物件のこだわり」を再確認する
「物件のウリ」を設定するために、私は次のような質問を出し、受講者に考えていただくワークをよく行います。みなさんも考えてみてください。
<質問1> 多くの似た物件の中で、入居者は、なぜあなたの物件に入居しなければならないのか?
この質問に答えることで、「自分でも忘れていた、物件のこだわり」を明確にすることができます。飲食店なら「安心素材である」「安価である」「ボリューム感がある」「雰囲気が良い」などのこだわりを打ち出して集客します。この方法を賃貸経営にも利用します。例えば「耐震性」「防犯性」「静粛性」「清潔感」「立地の利便性」などが打ち出しやすいものでしょう。特に最近は、世相を反映して「耐震性」「防犯性」に対する反応が高くなっている傾向があります。
●あなたの物件のこだわりをすべてリストアップ
入居者に対する訴求例を少し挙げると、「通常、木造2階建てでは使用しない、10m弱の杭を基礎に使用している」「小規模物件では珍しい、オートロックを装備している」など。これらは、実際に私の物件で使用し、効果を確認しているものです。物件ごとに様々なこだわりがあるはずですので、1つ残らず拾い上げて使えるものを見極めてください。
<質問2> 現在の入居者は、何が決め手で入居を決めてくれたのか?
どんな物件にも、「理想の入居者」と呼べる人がいるはずです。「その人は何が決め手で入居したのか」を考えます。思いつかなければ、実際にヒアリングしてもいいでしょう(その際は、お礼を忘れないようにしましょう)。その決め手が「物件のウリ」として、チラシなどのキャッチコピーに使えるものなら前面に打ち出します。つまり、「理想の入居者だけを集める」わけです。
●あなたは質問に答えられましたか?
これらの質問に瞬時に答えることができれば、あなたの「物件のウリ」は明確のはずです。「なぜこの賃料設定なのか?」という疑問にも答えられるはずですので、「思い切った高付加価値思考」や「思い切った低価格設定」で打ち出すことができます。二極化の時代は、「中途半端」では見向きもされません。何かしらの「尖った特徴」が必要です。それを見つけ出し、前面に打ち出していくことで、あなたの物件は「オンリーワン」となり、競争と無縁になります。ぜひ、「物件のウリ」を活用したアパート・マンション経営に取り組んでみてください。
※リンク
二極化時代を勝ち抜く方法<その1>あなたの「物件のウリ」は何ですか?
二極化時代を勝ち抜く方法<その2>「物件のウリ」を軸に、オンリーワンになろう!
二極化時代を勝ち抜く方法<その3>既存物件の「ウリ」のつくり方・見つけ方
(プロフィール)
にしやま・ゆういち 1969年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手ファストフード直営店店長を経て1995年、家業の花苗生産農家に従事。アパート経営にも携わり、空室続きの物件の経営の建て直しに成功。その後メゾネットアパートや戸建て賃貸を新築し、満室稼働を続ける。2008年、一般財団法人日本不動産コミュニティーの理事に就任。J-REC公認不動産コンサルタントとして講演、セミナーなどで活躍。その他、日本最大級の大家勉強会、大家さん学びの会の副代表も務める。著書に『絶対に儲かる大家さんになるバイブル』などがある。