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原状回復・長期修繕
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更新日 : 14/08/21

地震から入居者と建物を守る③アパート・マンションの補強対策

小野富雄建築設計室代表 小野富雄

木造アパートは、バランスの良い壁配置が重要

地震では、軽い建物が有利で、台風では重い建物が有利といえます。しかし、日本では「地震にも台風にも耐える建物」という課題を解決しなければなりません。

木造住宅の場合は屋根を軽くするだけでなく、風による吹上げなどから建物を守るために、軸組を金物で緊結することも忘れずに行ってください。壁は、筋違や構造用合板などで壁の耐力を上げる方法で補強します。その際強い壁が片方に偏るとねじれによる被害を招くため、バランスの良い壁配置が重要です。

●「耐震補強」は、退去時や空室から着手

耐震補強は壁や床を剥がす工事になることも多いため、空き室があれば、まずその耐震改修工事を終わらせ、他の部屋の耐震改修のための仮住居として利用し、順次改修していくとよいでしょう。

マンションは「控え壁の設置」「高架水槽の変更」で負荷を軽減

既存の鉄筋コンクリートの建物は、構造図面か構造計算書があれば、どこに補強が必要かは比較的容易に判断できます。どちらもない場合は鉄筋探査などが必要となり、業務量、費用ともかさみます。賃貸住宅の場合、耐震補強の方法によっては室内にも影響を及ぼし、空室を招く危険性もありますので注意が必要です。

影響が少ない方法として、たとえば建物の周囲に余裕がある場合は、外部に控え壁を設けて補強する方法、また高架水槽を直結増圧方式に変更することで、建物荷重を軽くする方法もあります。

●エレベーターは、地震対応のものに

最近のエレベーターは地震時に最寄りの階に停止し、自動的に安全確認を行ない、問題がなければ復旧運転する装置が付いています。しかし、旧式ではエレベーター管理会社の技術者が個別に復旧していくため、対応しきれない事態にもなりかねません。入居者が安心して暮らせるためには、エレベーターの改修も必要といえます。

●「配管」の改修のタイミング

貯湯式給湯器などを採用している建物は、揺れによる転倒や配管の破損がないようにメーカーの仕様書通りに固定する必要があります。手が届かない奥にあるビスの固定も、忘れずに確認してください。

●建て替えが必要なケースとは?

木造アパートもRC構造の物件も、劣化がひどく補強工事に多額の費用を要する場合は、建て替えを検討せざるを得ないこともあります。

特に液状化など地盤状況が悪い場所では、地盤を改良しない限り耐震補強の効果は得られません。また、既存物件の地盤改良には長い工期と多額の費用を要し、難しい工事になるといえます。もし配管の劣化も進んでいるなら、建て替えも視野に入れて検討する必要があるでしょう。

入居者目線で、安全確保を

地震における人的被害のほとんどは、転倒家具の下敷きによるといわれます。賃貸住宅内で死亡事故などが起きれば、その後の募集にも多大な影響が出ます。あらかじめ「長押」や「固定金具」などを設置し、家具の転倒を防止すれば、入居者の安心感や信頼感も高まります。

安全な賃貸住宅は築年数の問題ではなく「安全な建物に入居してもらう」という大家さんの意識にかかっています。入居者が安心して暮らせる環境をいかに整えるか。その点を踏まえてご自分の建物に合った対策を講じ、賃貸経営の安定につなげていただきたいと思います。

リンク

地震から入居者と建物を守る
その①「安全基準」の見直しが必須
その②耐震方法と建物の寿命
その③アパート・マンションの補強対策

プロフィール

おの・とみお 宮城県生まれ。関東学院大学工学部建築科卒業。小野富雄建築設計室代表。住宅、集合住宅、店舗、公共施設他の建築設計のほか賃貸住宅空室対策、大規模修繕なども行なう。東京都及び世田谷区・目黒区街づくり専門家登録。木造住宅耐震診断員。「水戸タウンハウス設計競技」(最優秀賞)他入賞多数。次世代にきれいな地球を引き継ぎ、地球への負担を少なくすることがモットー。『新しい住まいの設計・増改築全科』他著書多数。

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